沖縄県環境科学センター取材「HACCP義務化のビフォーアフター」【中編】
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taka沖縄の食の安全を守るプロフェッショナル
ハサップログ開発担当の末吉健悟による訪問取材第2弾。舞台は沖縄の食の安心安全を守る「一般財団法人沖縄県環境科学センター」。【前編】では衛生科学部奈宮正和部長、衛生科学部食品衛生課前田義徳課長、衛生科学部食品衛生課石原彩子技師の3名から、沖縄愛溢れる自己紹介とともに、食品衛生のプロとしての誇りも伝わってきました。【中編】では奈宮部長、前田課長、石原技師の職場となる沖縄県環境科学センターについて深堀してみました。※文中敬称略
沖縄県環境科学センターの衛生管理の取り組み
-「沖縄愛」が伝わる自己紹介、ありがとうございます。奈宮さんは部長、前田さんは食品衛生課の課長、石原さんは食品衛生課の技師としてご活躍されています。それでは、改めて沖縄県環境科学センターの活動内容などをお聞かせいただけますか?
奈宮 沿革によると1981年に財団法人沖縄県環境科学検査センターとして設立して、計量証明事業や食品衛生や水道の検査機関としてスタートしました。
前田 私が入った20年前は3部門ぐらいになりました。当時は輸入食品と学校給食をメインで検査していました。懐かしいです。
石原 そうなんですね、色々と私も知らなかった話もあります。今では衛生科学部、生活科学部、環境科学部、業務部、総合環境研究所があります。
-沖縄県環境科学センターはこじんまりとした検査機関としてスタートして、これほどの組織に成長しました。皆様が所属する衛生科学部はどのような役割を担っているのでしょうか?
前田 毎日安心して食することができるように、食品の「安全・安心」に関する検査や支援を行っています。食品衛生法に基づく輸入食品等の検査としては「規格検査」「残留農薬」「食品添加物」などを行っています。
先ほど軽くお話しした「コンサルタント業務」も食品衛生に関する内容になります。食品製造施設、学校給食、保育施設、ホテルの厨房などが多いですね。
石原 JFS規格、ISO22000、各業界団体HACCP等の食品安全マネジメントシステム認証取得へ向けた支援も行っています。また当センターは「水産食品加工施設HACCP認定制度」の継続審査機関となっております。
奈宮 皆さん大学で専門的に勉強されて技術も持っていますし、食品の検査や衛生管理業務に長年携わってきており経験豊富です。先ほど申し上げましたように、私は衛生科学部長として、どのように皆さんの能力や経験、そして適性を生かしてお客様への更なる価値提供につなげていくか。そのためには、各人がどうあるべきか、自ら考え行動する風土をつくっていくことが大切と考えています
前田 衛生科学部には「食品・臨床検査課」と「食品衛生課」があります。特に明確な区分と言うより、「やりたい人は誰でも資格を取得してチャレンジしてみてください」ぐらいのスタンスですね。
実際、食品表示検定の資格取得者も多いです。いわゆる飲食料品の食品ラベルの表示に関する検定ですが、確か上級は2名、中級は私を含めて7名ぐらい在籍しています。上級は…かなり難しくて(笑)。
奈宮 本当にプロフェッショナルな人材が揃っています。私もここに来てまだ2年ぐらいですので、正直、未だに各検査の詳細についてはよく理解できていません(笑)。
前田 沖縄県環境科学センター自体が、「公官庁」的な立ち位置からスタートしています。ただ、お客様とのお付き合いにおいて、どうしても「民間」の考え方や経験、スキルが必要になります。業種を問わず、民間企業で様々な経験をされた奈宮さんのような方が加わることで、「民間企業のマインド」も醸成されていきますので重要な役割を担っていただいています。
石原 確かにそうですね。奈宮さんが自動車メーカーで営業部長として販売会社に関わってきた実績や経験などを現場に落とし込んでいただくことで、衛生科学部として更なる高みを目指すことが出来ます。
前田 組織として大きくなったな、と感慨深いものがありますね。インターネットがそれほど普及していなかった1990年代ぐらいまでは、それほど注目される存在ではありませんでしたし。「食品衛生管理」に対する世間の関心も、今ほどはシビアではなかったかもしれませんね。その流れの中で、「G8九州・沖縄サミット」が、沖縄では食品衛生管理に対する世間の関心が高まる機運だったと思います。
石原 2000年7月のG8九州・沖縄サミットですね。その時の食品衛生管理に対する意識の高まりが、県内の食品衛生の意識の向上につながっているような気もします。
様々な分野の経験やスキル、マインドのかけ合わせで衛生管理を追求
「毎日安心して食することができるように」を願いながら、食品の検査やコンサルタント業務に励む沖縄県環境科学センターの「衛生科学部」。小さな検査室から、大きな組織へ。それぞれの専門領域で食の安心・安全を追求するプロフェッショナル、そして存分に力を発揮できる職場環境創り。組織として停滞することなく前に進むためにも、様々な分野の経験やスキル、そしてマインドのかけ合わせが重要だと再認識しました。まずは各地域の食の安心・安全を追求すること-。それがひいては「日本全体の食の安心・安全」につながるのだな、と強く感じました。そして2021年6月のHACCP義務化により、食品衛生管理は国際基準の時代へと突入しました。【後編】は「HACCP義務化のビフォーアフター」についてお届けします。
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この記事を書いたライター
taka
佐藤 貴洋(sato takahiro)。1973年横浜市生まれ。慶應義塾大学環境情報学部中退後、イタリア国立ペルージャ外国人大学留学。日刊スポーツ現地イタリア特派員として元日本代表MF中村俊輔のRegginaでの3年間を毎日取材。同時にLivedoorにてイタリア最大スポーツ新聞La Gazeetta dello Sportの翻訳記事を配信。2007年に日本帰国後は日刊スポーツ広島総局記者としてJリーグ、プロ野球、高校スポーツを担当。その後、広告代理店で各種大学・企業の広報誌などを、Webサイト制作会社でWebディレクター、Web広告運用などを経て2022年独立。趣味はフットサル、総合格闘技ジムROOTS。
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