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手洗いの重要性について ー食中毒事故を防ぐための手洗いとはー

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ライター

taka

食中毒事故は対岸の火事ではない

2023年も食中毒のニュースが続きました。9月には青森県の老舗駅弁製造販売会社で製造した2万個超の弁当の中から食中毒が発生。全国各地の駅弁フェアなどで販売されたこともあり、判明しているだけでも被害は29都道府県、550人超に上っているとのことです。

食中毒事故は、食品衛生の重要性を改めて浮き彫りにしました。青森県の駅弁製造販売会社での事故は、黄色ブドウ球菌が原因のひとつとされています。黄色ブドウ球菌は、ブドウの房のように連なった球菌で食品上でも増殖しますが、その際に産生する毒素(エンテロトキシン)が食中毒の原因とされています。

原因となりやすい食品として、おにぎり、いなりずし、巻きずし、弁当、調理パンなどが挙げられています。菌自体は熱に弱いものの、菌が生産する毒素は熱に強いことから、毒素が作られてしまうと加熱しても食中毒リスクを伴ってしまいます。

黄色ブドウ球菌は人間や動物の傷口をはじめ、手指・鼻・のど・耳・皮膚などに生息し、人間の鼻に約30%、耳に約60%の割合で存在していることが知られています。駅弁製造販売会社の事故の原因はまだ確定されていませんが、手洗いの不足が一因となっている可能性が指摘されています。

従業員一人が手洗いを怠ったことで食中毒に発展

食中毒を招く原因を理解することが、食中毒を防ぐ対策とも言えるでしょう。2019年に神奈川県内の某飲食店で発生した食中毒事故の原因は「手洗いの不足」でした。従業員の一人が手洗いを怠ったことが原因でノロウイルスが食品に混入し、多くのお客様が食中毒を発症しました。

この事件は、食品衛生を保つ上でいかに手洗いが重要であるかを明確に示たとも言えます。手洗いが不十分な場合、想像している以上の細菌が手に残ることもあり、その手を媒介することで食品に混入するリスクが高まります。ある研究によると、水で手をすすぐだけでは細菌の99%以上が除去されないことが明らかになっています。

手洗いの時間・回数で「残存ウイルス」はどれぐらい変わるのか

食品を扱う際に手洗いを怠ると黄色ブドウ球菌やノロウィルスなどの食中毒事故に直結してしまいます。適切な手洗いが食品衛生の維持には必要不可欠となりますが、それでは手洗いの方法により、残存ウイルス数がどれぐらいになるかを見てみましょう。

※手洗いなしと比較した場合
※出典:森功次他「感染症学雑誌、80:496-500,2006」
http://journal.kansensho.or.jp/Disp?pdf=0800050496.pdf

洗い残しが生じやすい箇所として指先、親指の付け根、爪と皮膚の間、そしてシワなどが挙げられています。また、普段細かい作業に慣れている利き手も入念に洗いましょう。例えば、利き手が右手の場合には無意識のうちに左手を念入りに洗う習慣が付いているかと思われますので、利き手も丁寧に洗う習慣を身に付けましょう。

ATP検査と手洗いマイスター

このように適切な手洗いを実施することにより、残存ウイルスの数を0.0001%にまで減らすことが可能となります。また、手洗いの効果を測定する方法として、ATP(アデノシン三リン酸)検査があります。手の表面に残る微生物活動の指標であるATPの量を測定することで、手洗い効果を確認することができる検査です。まずは、ATP検査を通じて、自分自身の手洗いの技術を客観的に評価してみても良いでしょう。

また、手洗いの専門性をより高めたい方に向けて、「手洗いマイスター」の制度も存在します。この制度は、人の手を介した二次汚染による食中毒の増加に対し、食中毒を未然に防ぐために食品等事業者による自主衛生管理の徹底を浸透させ、また、「手洗いマイスター」の称号を付与することで、手洗い指導の人材育成にも役立っています。

「食品衛生の基本は手洗い。手洗いに始まり手洗いに終わる」をフレーズに、手洗いの重要性や正しい手順を学び、実践することを目指しています。確かな手洗いの知識を覚えることで、食品衛生や一般衛生の向上に貢献し、安全な環境作りにつながります。

手洗いは食品の安全性を守るための基本的なステップです。消費者となるお客様に安全で高品質な製品を提供するためにも、手洗いの重要性について、改めて現場全員で確認し合うことが大切ですね。

この記事を書いたライター

taka

taka

佐藤 貴洋(sato takahiro)。1973年横浜市生まれ。慶應義塾大学環境情報学部中退後、イタリア国立ペルージャ外国人大学留学。日刊スポーツ現地イタリア特派員として元日本代表MF中村俊輔のRegginaでの3年間を毎日取材。同時にLivedoorにてイタリア最大スポーツ新聞La Gazeetta dello Sportの翻訳記事を配信。2007年に日本帰国後は日刊スポーツ広島総局記者としてJリーグ、プロ野球、高校スポーツを担当。その後、広告代理店で各種大学・企業の広報誌などを、Webサイト制作会社でWebディレクター、Web広告運用などを経て2022年独立。趣味はフットサル、総合格闘技ジムROOTS。

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